2013年1月6日日曜日

光について

「もっと光を」と、色彩論を書いたゲーテは亡くなる間際に言ったらしいが、暗く色彩のない部屋で最期をむかえるのは厭だったのだろうか。
冬至前後は屋外と共に室内が暗くなるのも早くなってくる。もっと光が欲しくなる。日中、外では十分な光で描けているのだが、室内で加筆修正したり、外で作った絵から大きな作品を作ろうとするとその時の明るさと光の色の違いに違和感を感じ悩まされる。

理科の話。光の「スペクトル分布(引用:http://i-zukan.net/より)」は屋外の太陽光(または空の光)と室内の普通の蛍光灯では大きく違っている。下の分布図では、太陽光と蛍光灯のそれぞれの波長での色の強さが分かる。太陽光はすべての色(波長)で連続して強くあるのに対して、蛍光灯は偏った特定の色域だけを強く持っている。

家庭用の蛍光灯では、ある特定の範囲の色は良く見える。
太陽光の色の移り変わりが平均的なのに対して、蛍光灯ではよく見える色とあまり見えない(見分けられない)色が出てくる。
照らす光は絵の画面に対して、各色をうつし出すもので、蛍光灯の光では絵の赤や黄色から緑の間の色、緑から青の色の違いがはっきり見えなくなってしまう。風景画では青や緑の使い分けが重要なので、それが見えず分からないまま描くのは、まるで鼻をつまんで食事しているような感じになってしまう。外からの自然な光のない夜に蛍光灯などの下で風景画を日中と同条件の見え方で描くのは、色の使い分けに関して至難の業なのである。
太陽光の下では見えていた黄緑~緑の微妙な違いが蛍光灯だと同じに見えてしまう。そうやって出来た絵は色の表現の幅が狭くなってしまうのである。
しかし屋内で描かなければいけない事も多くあるので、各色を出来るだけ見れる光源にしようと、今は高演色性の蛍光管を使っている。太陽の光とまではいかないが各波長の色をまんべんなく持っている。下はスペクトル分布図。
一般の蛍光灯のスペクトル分布


高演色蛍光灯のスペクトル分布


太陽光のスペクトル分布(一例)



「夜一生懸命描いて、朝、外の光に照らされて見たら全く大した事のない絵に見えて落ち込んだ。」と言った事はよくある話だけれど、夜の照明と太陽の光の演色性の違いも一つの理由になると思う。

しかし、絵を鑑賞するのは普通屋内なので、窓から自然光(直射日光でない)が当たるような場所に飾ってあったり、照明の整った美術館でない限り、鑑賞者が本当の色の豊かさを普段感じることは余りないかも知れない。

良い絵の条件は色だけではない、とも言う事になる。